2012年12月1日(土)~3日(月) 友の会創立25周年事業
 故宮博物院と台湾満喫の旅

  以下、参加者の旅行記を掲載します。
   ■旅レポート・・・伊藤英樹 氏(会員番号612)
   ■現代アートと伝統アートに肘鉄食らう・・・ふれでぃー山崎 氏(会員番号201)
   ■眼福満腹台北紀行・・・竹下兼喜 氏(会員番号513)
   ■「憧れの故宮へ」―台湾旅行に参加して・・・北村起美子 氏(会員番号640)

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■旅レポート
伊藤英樹(会員No.612)

 豊橋市美術博物館友の会創立25周年事業として、12月1日より3日間、台湾の旅に総勢31名にて行ってきました。出発機が20分早まったため、早朝5時半豊橋駅前に集合し、専用バスに乗り中部国際空港に向かいました。まずはバスの中で自己紹介から始まり、故宮への想い、映画「千と千尋の神隠し」のモデルとなった九份への想いなど語り合い、「美術館巡りと美食の旅」への期待がさらに高まりました。

 機内の人となり3時間のフライトの後に台北到着。お天気は曇り、気温は19度。時差1時間で得をした気分となり、簡単な昼食。その頃から雨が降り出し、車内で1万円≒3400元を両替し、まずは林本源園邸へ。楠(樟脳)で財を築いた林氏らしく楠やガジュマルなど大木が繁り、檜造りの「汲古書屋」、池を配した回廊式の「方鑑斎」と巡り色々な花が咲く庭園6千坪を見て回りました。

 次は元小学校を利用したという台北當代芸術館へ。現地学芸員による20分ほどのレクチャーがあり、チケットがトンボ型様で出来ていて、トンボの羽根20万枚で全館が飾られている今回の展覧会「粉紅微笑之後」で李山氏の作品を鑑賞しました。

 次に台北市立美術館へ。入場者が銀幕に登場し影絵として映し出される作品にドッキリし、階段途中にビデオ作品展示があり、学芸員よりしっかり説明を受けた後自由鑑賞となりました。現代美術の作品が多く、実験的色合いもあり、写真やビデオなどの作品も多かった。

 そして夕食は台湾料理「欣葉」へ。カラスミを大根とニンニクではさんで食べるのがお薦め。味は日本人好みで皆さん満足でした。新幹線、地下鉄工事、マンション建設など、モータリゼイションが進みバイクや車が増え、あちこちで渋滞があって時間も遅くなり、疲れたなぁとの声も多く、雨も降っており士林夜市散策は中止し、アンバサダーホテル台北へ到着。その代り希望者は、あの志村けんも推奨のマッサージ店「豪門世家」にてリラックス。また、九份でがけ崩れ発生の情報が入り、2日目午後と3日目午前の日程変更となる。これがラッキーとなった。

 そして2日目、今日も雨。朝一番で8時半に故宮博物院に。それでも順番待ちの状態でした。旅の現地ガイド宋(ソン)さんによると、リニューアル人気と中国本土の観光人増加が原因らしい。宋さんの説明によりまずは3階へ。代表格の玉石「翠玉白菜」「肉形石」に感嘆、次に象牙「象牙鏤彫提食盒」「彫象牙透花雲竜紋套球」一子相伝三代かけて創られるに声もでない。いい素材、いい技術、いい感性。次に2階陶磁器「唐三彩」「青磁」「油滴天目」など宋明清の時代の品多数。その後自由鑑賞。

 昼食は飲茶「鼎泰豊」、もう順番待ちでした。人気の小籠包の食べ方は、レンゲの上で穴をあけ、汁を少しだし、生姜をのせ、醤油1、酢3の割合のたれにつけて食べます。ほんとにおいしかった。午後は故宮継続組と2班に分かれて士林官邸へ。蒋介石の旧邸宅。本来なら外観のみだったが、中の邸宅見学も可能に。絵を描くことが好きだった奥様宋美齢さんのシンプルライフに合わせた造りで、大事にしていたことがよくわかりました。現在は大公園の一角にあり、当日は花博も開かれており大変にぎやかだった。次に忠烈祠へ。日本でいえば靖国神社みたいな軍人を祀る建物で、衛兵は1時間立ちっぱなし。瞬きもいけないらしい。そして総統府を車窓見学し中正記念堂へ。蒋介石の偉業を記念して建立した青い屋根と白い大理石の建物。エレベーターで最上階に上り、そこには蒋介石の大きな銅像があり、その前で衛兵交代式を見学する。夕食は北京料理「天厨采館」、北京ダックを食す。

 3日目は曇り。人気の九份へ。台北市内より1時間。かつては金の採れる金鉱山であり、山の斜面に最盛時は4~5万人が住む。映画「悲情城市」「千と千尋の神隠し」などで有名となる。両側に間口2間ほどのお店がびっしりと並んだ小道を小1時間散策。地元土産として陶笛があり、「千と…」のテーマ曲を店主が吹いていて、魔法にかかったように買ってしまった。そして人気店「阿蘭」で草もちをほおばる。1個10元。レトロな昭和の時代を感じつつ最後の石段の阿妹茶楼のところで小雨降るも、眼下には名もなき港の美しい景色が広がり映画のシーンのような雰囲気に酔う。次はお茶店にて台湾式お茶の試飲ショウ。昼食は小高い丘の上に立つ宮殿風建物圓山大飯店にて憧れの飲茶。台北市内が一望できるレストランでVIPになったようだ。大満足の食事を最後に空港へ。怪我も事故もなく無事3日間の旅を終えました。再見。
林本源園にて集合写真
台北當代芸術館外壁のトンボの羽
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■現代アートと伝統アートに肘鉄食らう
  ~台北の現代アート美術館と故宮博物館に迷い込んで~
ふれでぃー山崎(会員No.201)

〈現代アート その1〉 台北當代芸術館の巻
 (太好了!)愛大・孔子学院で学んだばかりの中国語の言葉が心に浮かぶ。ここは台北當代芸術館である。バスの窓から仰ぎ観る芸術館の外壁は小さな何かで覆われつくしている。(なんだこれは?)
何十万個かのトンボの羽が、そぼ降る雨に打たれていた。
 台湾の美術館に特に期待はしていず、油断をしていた。不意打ちを食らってしまう。(これは心してかからねば)
 館の中に入る。(これはすごい!) 館内中に現代アート作品が気ままに楽しげに遊んでいる。特に李山(リー シャン)氏の「トンボ」の作品は(太好了!)とてもエキサイティングなのである。
 ワクワクどきどき…。アドレナリンが次から次に湧いてくる。(すばらしい!なに~?好!!美極了!)
 ボランティアであろうか。胸に名前のプレートを下げた若い人達があちらこちらに。そして、入場者も若い人が目につく。素晴らしいと思ったことは、作品のレベルの高さはもちろんであるが…「若い人達が現代美術に興味を持っている」このことだ。

〈現代アート その2〉 台北市立美術館の巻
 (太好了!)台北市立美術館。ここでも中国語の感動の言葉が心に浮かぶ。美術館の玄関を入り…。すぐにノックアウトをくらう。何という事だ!自分自身がアート作品の一部となっていたのだ。壁に強烈な照明があり、その前を歩きながら中に入ってゆく。中に入って気付く。壁だと思っていたものは、巨大なスクリーンだった。そこには入場者の動く影が写されている。
 メインのテーマは「戦争と虐待」であろうか。ドイツ人の作家が招待されこのテーマでインスタレイションしている。
 作品の質の高さ、重厚さということでは素晴らしいことはもちろんだが、作品の見せ方という点でとても参考になった。すなわち、材料がどうとか平面か立体かとか写真であるとか映像とか…表現方法はなんでもいいのだ。要はその作家が何を言いたいのかが肝要なのだ。作品発表の次元の問題である。

〈伝統アート〉 国立故宮博物院
 (太好了!)国立故宮博物院に訪れるのは二回目である。以前来た時の印象はそれほどでもなかったが…。
 今回は(来た甲斐があった)のだ。何故か?台湾の旅行社の添乗員である宋子明(ソン ツーミン)さんの展示物解説が絶妙かつ分かりやすかったからだ。伝統的な民族作品の見学でこれほど充実したそれは過去に一度もない。宋氏に心から感謝である。それにしても中国4000年の歴史的文化のすごさに改めて感銘する。中医学(漢方医学)を学ぶ者として、さらなる勉学に励もうと心に誓う。
           ………………
 今回の台湾美術館巡り…(太好了!)なのだ。
李山氏の作品を前にして(台北當代芸術館)
昆虫類の眼は人の唇で表現(台北當代芸術館)
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■眼福満腹台北紀行
竹下兼喜(会員No.513)

 最初に拝見したのは、樟脳で財を成した雨に濡れる林本源園邸。楠木とマングローブの大木、垣間見る花が可憐。落ち着いた佇まい。次に台北當代芸術館へ。李山氏のトンボ。胴が人で大画面を浮遊、壁面に20万枚の羽根。日の光に映えるでしょうね。トンボに送られて台北市立美術館へ。壁面と床面グルッと一周の落書、空間を自由に扱う構成力。入場者の影を使った作品には天晴2個。

 翌日は故宮、気合の8時10分発。開館5分後着も既に行列。頑張って待った先に蘇軾(ソショク)作東坡肉(トンポーロー)。味の浸み具合、プヨプヨと旨そうな皮、食欲そそる照り、何で貴方は石なのよ。並んで翠玉白菜。天然材の存在と巧調の技と子を思う親の心が一体となって眼福の極み。続いて提食籠と21層の象牙の球。超絶技巧品に会えた幸せ。吉州窯の天目茶碗の曼陀羅華は白昼夢か。並ぶ汝窯の青磁。貫入の無い水仙盆。息継ぎしながら見ないと溺れるよ。福井県の三方五湖に似た色無かったかな。お土産用紙袋は懐素、自叙帖の文字をあしらった物。絵葉書5枚で5袋貰ってラッキー。

 午後から蒋介石、士林官邸へ。九份の道が崖崩れの為に予定変更。邸内見学の嬉しい結果。落ち付いた上質のセンスの中に人への思い遣りを感じました。雨に多謝。忠烈祠は厳かでゆるぎ無く臨戦台湾に背筋がピッ。中正記念堂の衛兵交替はお見事。最終日の九份、雰囲気浅草に似た古街。天空の里の油毛氈屋は、そのまんま千と千尋のアニメの世界。楽しかったな。

 台湾料理は福建省南部の閩南(ミンナン)料理を根源にその食習慣と台湾の豊富な食材が合体して出来た料理とか。身構えて城市商旅へ。担子麺、マグロの刺身。夜は欣葉の台湾料理。韓国より広州より上海より好吃!!叉焼包、豆沙芝麻球どんどんいらっしゃい。小籠包の鼎泰豊で飲茶。膳に慣れた我々に個数割当が嬉し。素材が最良の状態で包まれていて好吃。もう少し熱ければ醍醐味を感じたのに残念です。天厨の北京ダック。皮はパリ、直下の脂肪の旨い事。スープ、蒸し黄魚、出品例外無く美味。円山大飯店は格調高く台湾料理の凄さを堪能した。台湾性急性肥満症警報発令か。茶芸体験。説明にメチャ説得力。お姉様の肌が綺麗、お茶の効果ですよ、きっと。コンビニで毎朝元気と言うお茶を購入。甘味料入り。嗜好に対応する台湾、茶の味を競う日本。私は後者派。満腹の食紀行でした。

 それでは皆様「ニッコ、ニッコ、ヨンコネ」。再見。
台北市立美術館にて
九份の階段
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■「憧れの故宮へ」―台湾旅行に参加して
北村起美子(会員No.640)

 毎回旅行の案内を頂くものの休みが合わず、いつも指を銜えるばかりでした。美博の旅行は、テーマが絞られ、アートへの造詣が深く、その企画力、鮮度の良さには脱帽でした。今回は5年に一度の海外視察、しかも台湾の故宮博物院と聞き、スケジュールもそっちのけで飛びつきました。

 故宮へは、リニューアルされる8年前に一度だけ訪れ、丸2日、時間も忘れ、開館から3時過ぎまで、気がつけば、水を飲むのも食事をとるのも忘れて、目を奪われていました。見る事でお腹がいっぱいになったという経験は初めてでした。毎年訪れてみたいと思ったものです。
 収蔵品は、工芸品が多く、とくに陶器、絵画、民具、装飾品等、特に「翡翠の白菜」で知られるように緻密な作品が多い。一点一点細密で、どのようにして作られたのか、気が遠くなるようなものばかりです。歴史の壮大さ、文化の深さ、今の中国からはうかがい知れないほどの叡智の塊の様な収蔵品で溢れています。数十万点ともいわれるものをすべて見るのに18年もかかるとのこと。中国5千年の歴史、人類の歩んできた壮大なロマンを見る思いです。まさに珠玉のミュージアムです。

 12月2日朝一番から見学。尖閣の問題で日本を避けた中国からの観光客がいっきに、台湾政府の緩和政策も相まって台湾に来やすくなったとのこと。ご多分にもれず、中国人でロビーは溢れていました。以前は、台湾の人より日本人の方が多かったのですが…。覚悟を決めての見学になりました。
 一段と綺麗になった故宮博物院は、以前のような収蔵品室のような趣から、時代や作品のコンセプトを絞ったテーマパークの様な仕掛けで、迎えてくれました。周時代(紀元前1200年)の青銅の鼎たちは、地下の様な暗い部屋に蠢くごとく陳列され、宋時代の文人画は、大きな絵巻のようなスクリーンにアニメの如く動いていました。現代とのコラボです。昼からは、少し観光客も減り、一人で歴史の迷路の中を彷徨い、4階のカフェでお茶も堪能できました。
故宮第1展覧室にて集合写真
圓山大飯店の欄の大鉢
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